ここまで、内科受診への道、というテーマで標榜科のからくり、内科系の専門医資格についてお話してきました。今回は、そもそもの話として、内科専門医の受診をすすめるのか、2つの理由をお伝えしたいと思います。長くなりそうなので(!)、まずは1つ目の「診断の大切さ」からお話させてください。

 

 内科医の診療は、外科医の手術のように、結果がすぐに、また分かりやすく見えるものではないかもしれません。しかし、科に関わらず、クリニックは大きな手術ができる場所ではありませんし、手術するべき病気なのかどうか?最適な治療は何か?を判断するためには、正しい診断を下すことが不可欠です。内科とは「診断学」を磨く科である、と私は考えています。研鑽を積んだ内科医は、患者さんのお話から病歴を整理し、診察を行いながら、「鑑別診断=考えられる病気」を挙げていきます。最も可能性が高い疾患を念頭に置きつつ、見逃してはいけない疾患も漏らさないように診断を進めていくのです。このプロセスが十分でないと、症状への対応が短絡的になりがちで、よくある問題は解決できても、見落としたり誤診するリスクが高まってしまいます。それは結果として、患者さんに不利益を及ぼすのです。

 

 例えば、ある患者さんが「咳が出る」と来院されました。原因は何でしょうか?どんな対応が望ましいでしょうか?

 

 咳のよくある原因は感冒、いわゆる風邪ですから、「風邪は日にち薬ですよー。検査も特にはいらないですね。咳止め希望?うーん、咳が出るのも体の大事な反応だけどね。まぁ辛いだろうからちょっと出しとこうか。」でいいでしょうか?「20代の生来健康な方の数日前からの症状」で、「周りで風邪が流行っている」という背景を確認でき、喉が赤くて鼻詰まりがあり、呼吸音は問題ないという診察所見があれば、たしかに上記のような対応はありうるでしょう。

 

 でも、もしも「70代のヘビースモーカーの方の数ヶ月前からの症状」ならどうでしょうか?「体重が減ってきて血痰が出るし、歩くと息切れが強くなっている」という情報を聞き出せたら?診察してみると、右の呼吸音があまり聞こえません。この場合には、肺がんや結核といったより重篤な疾患を考えて検査を計画することになります。

 

 これらは極端な例ですが、患者さんが訴える症状=診断、ではありませんし、時には患者さんが問題視していない変化の方が重大なサインである場合もあります。適切な診断のためには、主症状だけに着目するのではなく、経過や患者さんの背景因子、随伴症状を聞き出すこと、そして診察を行い情報を整理しながら問題の本質を見抜く力が必要です。

 

 診断は、その後の治療方針に直結するとても重要な過程です。そして決して簡単なことではありません。診断が付いていない患者さんがまずアクセスする地域のクリニックにこそ、診断学を強みとする内科の専門医の価値があるのではないでしょうか。

 

かめいクリニック院長

 

 

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