前回、内科の専門医受診をおすすめする理由には2つあり、1つは診断のプロフェッショナルであること、とお伝えしました。2つ目のスキルは、「問題点の整理」だと考えています。ご長寿の方が増えている近年では、一人の患者さんが複数の問題を抱えていることは少なくありません。

 

 たとえば、80代のAさん。「日中ふらふらして、出かけるのが億劫になった。前は毎週ゴルフに行っていたのに…」と訴えて来院されました。話を伺うと、・腰痛持ち、・血圧が高いと言われている、・最近夜は頻尿でゆっくり休めなくなってきた、とのこと。さらに尋ねると、「腰は整形で湿布としびれ止めをもらってるよ。ふらつくのは血圧のせいじゃないと言われたねぇ。それで、血圧のお薬が増えたんだよ。眠れないのは困るから神経科に行ったら眠剤出してもらったの。でも、一つじゃ眠れないから二粒飲んだりしてるよ。頻尿は歳のせいだろうって。泌尿器科で薬もらったんだけど、なんだかめまいがするんだよなぁ。」と複数の科を受診して、それぞれから処方薬を受け取っていました。その数合計10種類ほどです。

 

 診察し処方薬を確認したところ、・ふらつきの副作用がある薬が複数あること、・血圧は眠れなかった翌朝は高いがその他はむしろ低いこと、・最近寝る前に飲酒するようになったこと、・健康診断は数年受けていないこと、がわかりました。寝酒を習慣にしないよう指導し、処方の一部を変更したところ、睡眠の質が向上。眠剤はごくたまに使うくらいとなり、血圧の薬も減らすことができました。また、健康診断では、腎機能が下がっていることがわかり、しびれ止めは相対的に多いと考えられました。最終的には処方薬は半分以下になり、体調が回復したAさんは趣味のゴルフをまた楽しめるようになりました。

 

 Aさんは決して稀な例えではなく、診療しているとよく出会う患者さんの一例です。一つ一つはよくある症状・疾患で、難しい病気が隠れているというわけではありません。しかし、Aさんの困りごとは解決できていませんでした。こういったケースでの問題となるのは、全体を整理しまとめる役割の医師がいないことです。専門の科を受診しても、それぞれの視点だけではAさんの問題の本質が明らかにはならず、かえって状況を複雑にしてしまうことがあります。まさに、「木を見て森を見ず」の状態です。

 

 日本の医療アクセスの良さはありがたいことですが、一方でこういった舵取り不在の状態を生み出す一因でかもしれません。内科は臓器の垣根を越えた分野です。そして、院長が専門とするリウマチ性疾患や膠原病は肺や腎臓、神経など複数の臓器に異常を生じるため、ことさら全身の評価が求められます。Aさんのような事例が生み出されないためには、その人の生活習慣まで含めた全身を捉え、問題点を整理することができる内科医の出番ではないでしょうか。

 

 地域のかかりつけ医は、一つの疾患だけに注目して治療するのではなく、一人の患者さんの問題点を整理し治療の道筋を立てるのが役割です。「なんでも気軽に相談してください」、言うのは簡単ですが、実際にはとても難しいこと。もし、いろいろな問題を抱えておられるならば、診断そして問題点の整理をトレーニングしてきた内科の専門医に、一度ご相談してみてはいかがでしょうか。

 

かめいクリニック院長

 

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内科・リウマチ科の専門医による総合診療を行なっておりますので、お困りの症状がある方はお気軽にご相談ください。

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